東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)101号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告ら主張の審決の取消事由の存否について判断する。
1(一) 成立に争いのない甲第一三号証(本件考案の出願公告公報)及び甲第一四号証(昭和五七年一二月三日付け手続補正書)によれば、本件考案の技術的課題(目的)、構成及び作用効果は次のとおりであると認められる。
本件考案は、合成樹脂製の組立式クリスマスツリーに関するものである(本件考案出願公告公報第一頁第二欄第二行及び第三行)。従来の組立式クリスマスツリーは、大きさや形状が規格化されて製作されているため、どれも同一形状のものばかりで、本物の樹木がもつ独特の枝振りや雰囲気を独自に醸し出すことができなかつた。また、クリスマスツリーに付ける装飾品の飾り付けに当つて枝体の位置を変えたり、あるいは幹体や枝体を必要に応じて継ぎ足すことにより、全体の大きさや形状を変えて周囲との調和を図つたりすることが望まれていた(同公報第一頁第二欄第四行ないし第二三行)。
本件考案は、右知見に基づき、クリスマスツリーの幹体や枝体などを必要に応じて継ぎ足したり、あるいはその枝体の位置を適宜個所にずらしたりして全体の大きさや形状を任意に変更して個性ある形状に組立てることができ、しかも強度的に優れ、さらに各部の組立作業が簡単でかつ組立後の接続状態も良好であり、また分解したときには嵩ばらず保管や運搬に便利な組立式クリスマスツリーの幹体構造を提供することを目的とし(第一頁第二欄第二五行ないし第三三行)、前記本件考案の要旨記載のとおりの構成を採用した。
本件考案は右構成を採用したことにより、枝体の上下位置を必要に応じて変えられ、装飾品の飾り付けに適した枝体の位置関係として全体的な外観を整えることが容易であり、また、幹体や枝体を継ぎ足すことが可能であることから、従来のものに比べて非常に個性的かつ独創的な模造品に仕上げることができること、さらに、本件考案は細部まで分解可能であるから、嵩ばらず、保管や運搬に便利であり、また幹体の心材として各パイプ及び円柱状の心棒を使用しているので強度的にもすぐれていること、そして、枝体の嵌挿部表面には凹凸を形成しているから、これが分枝幹体の嵌合孔の内壁面に圧接して嵌合状態が確実になり、枝体の不用意な外れを阻止し、また右嵌合孔と嵌挿部は共に断面多角形となつているので、枝体が軸廻りに回動することなく、確実な任意の位置決めができ、自在に枝振りなどを変化させることができるという作用効果を奏するものである(同公報第三頁第六欄第一六行ないし第四頁第七欄第一一行)。
(二) 他方、第一引用例ないし第一一引用例には、「審決の理由の要点」4項に認定の技術的事項が記載されていることは当事者間に争いがない。
2 相違点(一)の判断について
本件考案は、本物がもつている独特の枝振りや雰囲気をかもしだすべく、枝体の位置を適宜個所にずらしたりして全体の大きさや形状を任意に変更して個性ある形状に組み立てるようにすることを技術的課題とし、分枝幹体と枝体との結合について、結合手段(イ)及び(ロ)の構成を有するものであることは前記1(一)で認定したとおりである。そして、前掲甲第一三号証によれば、本件考案は、「分枝幹体に多数の枝体を差込むための多角柱状の孔を形成したので、比較的重い葉をつけた枝体を挿し込んでも、乱りに回動しない特徴がある。すなわち、本考案では、嵌合孔18Cを正多角柱状に形成し、一方、嵌挿部20Cを嵌合孔18Cに対応する正多角柱状にしているので、両者を嵌め合わせた状態では枝体が軸回りに回動することなく確実に位置決めされる。したがつて、枝体に電飾灯、人形、ろうそくなどの各種装飾品を飾り付けても、枝体は確実に回り止めされているので何ら問題はない。このことは前記の各種装飾品の重量が大でかつ偏心した位置に飾り付けたときなどに特に効果的である。また、前記嵌挿部の表面に抜け止め用凹凸を形成しているから、この凹凸の部分が嵌合孔の内壁面に圧接して嵌合状態が確実になり、したがつて不用意に外れたりすることもない。また本考案では、嵌合孔および嵌挿部が共に断面正多角形となつているので、枝体をその軸回りに回動させた任意の位置(実施例においては六通りの位置)に自在に位置決めして枝振りなどを変化させることができる(本件出願公告公報第三頁第六欄第三五行ないし第四頁第七欄第一一行)。」と記載されていることが認められる。
右事実からすると、本件考案は、分枝幹体の枝取付片と枝体に断面正多角形状の嵌合孔と嵌挿部を設けたことにより、枝体を正多角形の辺数に応じた方法で、軸回りに回動して任意に位置決めでき(例えば、正六角形であれば六通りの、正八角形であれば八通りの)、しかも嵌合部は、嵌挿部の面と嵌合孔の面が対応して嵌め合わされ多角形状であり、かつ嵌挿部の表面には凹凸が形成され、右凹凸部が嵌合孔の内壁面に圧接されることから、分枝幹体の枝取付片と枝体との嵌合状態は一層確実となり、枝体に重量のある装飾品等を飾り付けても枝体は軸回りに回動することなく確実に回り止めされ、また、軸方向への外れも阻止され得るものであることが認められる。
以上のとおり、本件考案は、分枝幹体の枝取付片と枝体との着脱自在な結合に、結合手段(イ)及び(ロ)を併用し、その相乗作用によつて効果Aを奏し得ているものであるところ、成立に争いのない甲第一号証ないし甲第一一号証を検討するも、各引用例には結合手段(イ)と(ロ)を併用したものは認められない。そして組立式クリスマスツリーにおいて、枝振りなどを容易に変化させることができ、かつ不用意に外れることがないという前記効果Aは、その用途からみて、格別のものというべきであり、この点における審決の認定、判断に誤りはない。
原告らは、「本件考案において、枝振りの最も良い位置はあらかじめさだめられており、枝振りを容易に変化させるという技術的課題は設定自体無意義である」と主張する。
前掲甲第一三号証によれば、本件考案の詳細な説明には、実施例として「鍔部20e側には位置決め用の目印20g(これは文字Bに限らず目印になるものであればよい)が、それぞれ刻設されている(本件出願公告公報第二頁第四欄第二〇行ないし第二三行)」と記載されていることが認められる。しかしながら、本件考案は、本物の樹木がもつている独特の枝振りをかもしだすために枝体を任意の位置に決め個性ある形状に組み立てることを目的として、結合手段(イ)及び(ロ)の構成を採用したものであることは前記認定したとおりである。したがつて、枝体に刻設されている目印は枝取付けの際の一例を示しているにすぎず、需要者は右目印を参考にしながら、これにとらわれることなく、自在に位置決めすることによつて個性的なクリスマスツリーを完成させることができるのであつて、右技術的課題が無意義であるとはいえない。
また、原告らは、「枝体を任意に位置決めし、回動を阻止することは第三引用例記載のものでもなし得ることであり、そもそも、回動の阻止は、合成樹脂の嵌挿部と嵌合孔との単なるフラツトな弾性圧嵌によつても十分に達成できるのであつて、嵌合部をあえて多角形状にしたことによる格別な効果はない。」と主張する。
第三引用例記載のものは、分岐幹の先端に全周面に固定用の掛止突部を棘状に突設した小径の接合部を突設し、枝幹主体の基部に形成した管状孔を前記接合部に接合して、樹枝茎主幹に対し枝幹主体を非回動に固定してなる造花用樹枝花茎であることは当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第三号証によれば、第三引用例には、「特に本案では棘状に突出した掛止突部3の存在により、右が管状孔8の内周面に咬着状に圧着する。両者は半硬質樹脂材であるため突部3は変形的に周面に圧着され、これによつて密嵌固定が容易化され、主幹1に対し主体5は回動しないので従来の回動自在に連結するものに比し、主幹1主体5によって整形した樹枝花茎全体の形態が固化され(第一頁右欄第八行ないし第一五行)」と記載されていることが認められ、第三引用例記載のものは、合成樹脂の弾性力によつて嵌合孔が棘状に突設した嵌挿部を圧着して固定しているものである。このように、嵌挿部を嵌合孔に挿入し、合成樹脂の弾性力を利用して圧縮状態におくことによつて密嵌固定しているような場合、何回か枝体を嵌合孔に抜き差しして使用している間に合成樹脂製の棘が折れたり変形し、また嵌合孔や嵌挿部自体に永久歪が生じることは技術上自明のことである。かくしては、合成樹脂の弾性圧嵌による回動阻止力は弱まり、枝体をしつかりした固定状態に維持することはできなくなる。
これに対して、本件考案は、嵌挿部を嵌合孔に対応する正多角柱状にし、これを嵌め合せることによつて、枝体を任意な位置に挿入し得るとともに、枝体の回動阻止を図つているものであるから、合成樹脂の弾性を利用した場合のような、合成樹脂の変形、歪による回動阻止力の弱体化という虞れはなく、枝体が比較的重い葉をつけている場合、又は枝体に飾り付いた多種装飾品の重量が大でかつ偏心している場合等においても、枝体は確実に回り止めされ、不用意な回動が阻止されるものである。したがつて、多角形嵌合の結合手段は、分枝幹体の枝取付片と枝体との結合に当たつて格別の作用効果を奏しているものであることは明らかであり、原告らの右主張は採用し得ない。
3 相違点(二)の判断について
原告らは、「本件考案が、基幹体の外周下方部を漸次拡大するように形成された鍔部を鉢体の支持孔の上端面に当接支持させたこと及び基幹体に第一心棒を内挿させたことの構成はいずれも第二引用例に開示ないしは示唆されている」と主張する。
本件考案は、「鉢体の支持孔に取り付けられる棒状の基幹体と、この基幹体の軸方向に形成された角柱状の孔に内挿される角パイプ状の第一心棒と、(中略)前記鉢体の支持孔の上端面には、基幹体の外周下方部を漸次に拡大するように形成した鍔部が当接支持されるようにした」との構成を有するものであることは前記1(一)項認定のとおりである。そして、前掲甲第一四号証によれば、本件考案手続補正書には、「樹木の大型化によつて鉢体の大型化と堅固な取付をしないと支持が不安定になり倒れたり傾斜したりすることが必定である。この点で本願は、(中略)第1基幹体14の下方部を拡大状にし鍔部14dを形成し、この鍔部が蓋体上端面に当接して嵌合するようにしたので、基幹体の根端部が堅固に密着した状態で取付けられる利点がある(第二頁第一一行ないし第三頁一行)。」と記載されていることが認められる。右事実によれば、本件考案は、右鉢体の支持孔に取り付けられた基幹体の下部に鍔部を形成することにより、樹木の支持を堅固しているものであることが認められる。
他方、前掲甲第二号証によれば、第二引用例の、特に第7図(別紙図面二参照)より認め得ることは、中空角心棒に外挿される幹体が下方に行くに従つて漸次に拡大する形状を示していることでしかなく、右幹体の最下部のものが、本件考案における第1基幹体と同様、鉢体の支持孔に取り付けられる状態にあり、かつ、右幹体の拡大部が鍔状になつていることまでは認めることはできず、また、第二引用例の記載を検討するも、第二引用例には鍔部を形成することの技術的課題及び作用効果に関する記載は全くない。
したがつて、第二引用例には、本件考案における、鉢体の支持孔に取り付けられた基幹体の外周下方部を漸次に拡大するように形成した鍔部を鉢体の支持孔の上端面に当設支持させる構成は開示ないしは示唆されておらず、原告らの前記主張は理由がなく、相違点(二)についての審決の認定、判断に誤りはない。
4 相違点(三)の判断について
原告らは、「幹体構造を第一心棒と第二心棒に分け、第二心棒が断面円形になる構成は第九引用例に示されている。また、枝取付体を好きな位置に回動可能にすることは第九引用例記載のものでも可能である。そもそも、審決が、本件考案が奏すると認定している効果Cについては、本件考案の詳細な説明には何らの記載もない」と主張する。
本件考案は、「角パイプ状の第一心棒と、(中略)前記第一心棒の上端開口部に嵌め込まれる差し込み部が一体に設けられた円柱状の第二心棒と、この第二心棒に着脱自在に外挿される複数の中間幹体と、これら中間幹体間に挟持されるとともに前記第二心棒を挿通する挿通孔を具えかつ小枝、突出枝、針葉等を有する枝取付体とからなる」との構成を有するものであることは前記1(一)で認定したとおりである。ところで、本件考案が第二心棒を円柱状に形成したことによる効果については、前掲甲第一三号証及び甲第一四号証によるも、本件考案の詳細な説明にはこれが記載されているものとは認められない。
しかしながら、本件考案の第二心棒を円柱状に形成することによつて、これに外挿された枝取付体は、外挿された状態において自在に軸回りに回動させることができるという作用効果を得ることは、本件考案の詳細な説明に直接記載されていなくとも、本件考案の前記構成から当業者が容易に理解し得るところであり、本件考案の構成から自ずと明らかな作用効果である。
他方、成立に争いのない甲第九号証によれば、第九引用例には、「この発明に係わる人造(組立式)ツリーはその全長にわたつて連続的に延びる幹体(心棒)を備えており、これに対し外面にツリーの樹皮を表す型で形成された所定の長さの種々の幹体を取り付けると共に、その幹体(中空パイプ状)の一部のものは枝を取り付けるための必要数の枝群取付体を有する放射状の分枝幹体を、また別の幹体には突起状小枝取付を、さらに別のものは滑かなツリーの樹皮と同様の幹体で、それぞれ所定の中間幹体を表しており(第一頁左欄第一七行ないし第一頁右欄第七行)」「第1図(FLG.1.)は枝又は小枝を存する人造ツリーの上部(第二心棒)及び幹体一部断面図(第一心棒)(第一頁右欄第三二行ないし第三四行)」「まず第1図において説明するとツリーの幹体は所定(必要)の長さの軽量金属パイプ1(第一心棒)により構成され、この上をプラスチツクで樹皮のように形成された幹体2が被覆されている。(中略)また別のものは、枝、及び小枝を挿着するような分枝幹体及び第二心棒4を有している。軽量金属パイプ幹体1の開口上端部は中央装着口3を形成された嵌着口3により閉じられており、この中央装着口にはツリーの先端下方4(第二心棒)の最先端5において外面に枝分れしている(第一頁右欄第三八行ないし第二頁左欄第八行)」「中間幹体8は第2図に図示されている通り幹体10の対応凹部に嵌合される、舌状部9(凸)が形成されている。こうして幹体を相互に嵌合することにより幹体の連結性が改善され軽量金属パイプ幹体1と密接して所定の長さの幹体間に小さな間隙を見せることを避けることができる(第二頁左欄第二二行ないし第三〇行)」と記載されていることが認められ、右事実及び第九引用例の第1ないし第4図(別紙図面四参照)からすれば、第九引用例記載のものにおいて、心棒となり、これに分枝幹体や小枝取付体等の中間幹体8を取付け得る機能を有するものは、断面円形状の第一心棒であり、第二心棒は、幹体である第一心棒の上端部に装着され、その先端を枝別れ状にしている枝体でしかないものと認められ、これが、本件考案における第二心棒に相当するものでないことは明らかである。したがつて、第九引用例には、幹体構造を第一心棒と第二心棒とに分ける構成は開示されていない。しかも、第九引用例記載のものにおいて心棒を被覆する中間幹体8の部材どうしは、互いに上下端の突起と凹部とがはまり合う状態にある。したがつて、分枝幹体や小枝取付体等を心棒に外挿させたまま軸回りに自在に回動させ、好きな位置に調整することはでき得ないものと解される。
してみると、中間幹体や分枝幹体が外挿される第一心棒として角パイプ状のものを用い、第一心棒の上端開口部に差し込まれ、かつ中間幹体や枝取付体が外挿される第二心棒として円柱状のものを用いた本件考案の構成は、各引用例に記載されておらず、本件考案は、右構成を有することにより効果Cを奏するものである、とした審決の認定、判断に誤りはない。
4 以上のとおりであつて、相違点(一)ないし(三)についての審決の判断は正当であつて、審決に原告ら主張の違法はない。
三 よつて、審決の違法を理由としてその取消しを求める原告らの本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。
〔編注1〕本願考案の要旨は左のとおりである。
鉢体の支持孔に取り付けられる棒状の基幹体と、この基幹体の軸方向に形成された角柱状の孔に内挿される角パイプ状の第一心棒と、この第一心棒に着脱自在に外挿される複数の中間幹体及び分枝幹体と前記第一心棒の上端開口部に嵌め込まれる差込み部が一体に設けられた円柱状の第二心棒と、この第二心棒に着脱自在に外挿される複数の中間幹体と、これら中間幹体間に挟持されるとともに前記第二心棒を挿通する挿通孔を備え、かつ、小枝、突出枝、針葉等を有する枝取付体とから成る組立式クリスマスツリーにおいて、前記分枝幹体にはその表皮面から斜め上方に放射状に突出する複数の枝取付片が一体に設けられ、この各枝取付片の先端部には正多角柱状の嵌合孔が形成され、この嵌合孔に着脱可能に嵌挿される枝体の嵌挿部は前記嵌合孔に対応する正多角柱状とされ、さらにこの嵌挿部にはその表面に抜止め用の凹凸が形成され、前記鉢体の支持孔の上端面には、基幹体の外周下方部を漸次に拡大するように形成した鍔部が当接支持されるようにしたことを特徴とする組立式クリスマスツリーの幹体構造。(別紙図面一参照)
〔編注2〕本件における審決の理由の要点は左のとおりである。
1 本件考案の要旨は、前項のとおりと認める。
2 請求人(原告たからや物産株式会社)は、意匠登録第三九九五九〇号公報(以下「第一引用例」という。)昭和五〇年実用新案出願公開第一三五五〇〇公報(以下「第二引用例」という。)、昭和三六年実用新案出願公告第二四一八八号公報(以下「第三引用例」という。)、昭和三九年実用新案出願公告第六七四七号公報(以下「第四引用例」という。)、昭和四五年実用新案出願公告第二二六七二号公報(以下「第五引用例」という。)、昭和五三年実用新案出願公開第一四七九九四号公報(以下「第六引用例」という。)、昭和四八年実用新案出願公開第五八八三二号公報(以下「第七引用例」という。)、別役萬愛編「MECHANISM」(技報堂昭和五〇年三月一五日発行)第三二〇頁及び第三二一頁(以下「第八引用例」という。)、英国特許第九九〇七二五号明細書(以下「第九引用例」という。)、昭和三五年実用新案出願公告第二八六二五号公報(以下「第一〇引用例」という。)、及び昭和五〇年実用新案出願公開第一五二七八三号公報(以下「第一一引用例」という。)を引用し、「本件考案は、第一引用例ないし第一一引用例に記載される教示、及び周知技術から当業者であれば極めて容易に実施し得るところであり、実用新案法第三条第二項の規定に該当し、実用新案法第三七条によつて無効にされるべきである。」と主張している。
3 参加人(原告株式会社新井清太郎商店、同株式会社ユーナイト)は、丙第一号証(丙号証は審決における号証番号、以下同じ)の「X'MAS DECORATION」のカタログ、丙第二号証の「くすの木の七八年クリスマスデコレーシヨン」の価格表、及び丙第三号証の英国特許第九九〇七二五号明細書を引用し、丙第二号証の記載からみて、丙第一号証のカタログは丙第二号証の発行年の遅くとも前年に発行されていたとみるべきであり、本件考案は、丙第一号証及び丙第三号証に記載されたものに基づいて、当業者が極めて容易に考案できたものであり、実用新案法第三条第二項の規定に該当し、その登録は無効とされるべきであると主張する。
4 第一引用例ないし第一一引用例、及び丙第一号証ないし丙第三号証について、それらの記載内容等を検討する。
第一引用例には、底部中央に凹部を設けた鉢体と中央に孔を設けた蓋体とから成るクリスマスツリー用支持鉢が記載されている。
第二引用例には、鉢状の支持台に立てられる中空角形心棒と、この中空角形心棒に着脱自在に外挿される角形孔を備えた複数の筒状幹体及び分枝幹体と、前記中空角形心棒の上端開口部に着脱自在に嵌め込まれる小径の柱状差込み部分と外周下方を漸次に拡大するように形成した大径の柱状部分と前記部分間に存在する径方向の部分(以下「鍔部」という。)とを一体に形成した幹頭体と、前記分枝幹体に着脱自在に取り付けられる葉枝とを備えた組立式クリスマスツリーにおいて、前記分枝幹体にはその表皮面から斜め上方に放射状に突出する複数の枝取付片が一体に設けられ、この各枝取付片の先端には葉枝差込み穴(以下「嵌合孔」という。)が形成され、この嵌合孔に着脱可能に嵌挿される枝体の部分には前記嵌合孔に対応する形状の嵌挿部が形成され、前記の複数の筒状幹体の最下部の筒状幹体が下方に行くに従つて直径が拡大する形状になつていて、その下端が鉢状の支持台の上面に当接されるようになつている組立式クリスマスツリーの幹体構造が記載されている(別紙図面二参照)。
第三引用例には、分岐幹を各方向に向けて突出させた樹枝茎主幹と、前記分岐幹に着脱自在に取り付けられる枝幹主体とから成る造花用樹枝花茎において、分岐幹の先端に全周面に固定用の掛止突部を棘状に突設した小径の接合部を突設し、枝幹主体の基部に形成した管状孔を前記接合部に嵌合し、樹枝茎主幹に対し枝幹主体を非回動に固定して成る造花用樹枝花茎が記載されている(別紙図面三参照)。
第四引用例には、前記造花用樹枝花茎において、分岐幹の先端に小径の螺杆部を一体に突設し、枝幹主体の基部に形成した螺孔部を前記螺杆部に螺合させた造花用樹枝花茎が記載されている。
第五引用例には、ブロツク主体の一面に突設した円形突起を、他の同形のブロツク主体に形成した嵌合孔に嵌合させて複数のブロツクを結合する合成樹脂製ブロツク玩具において、前記嵌合孔の内周面に複数個の突条を形成したブロツク玩具が記載されている。
甲第六引用例には、前記合成樹脂製ブロツク玩具において、嵌合孔の内周面に周方向の溝を形成し、円形突起の外周面に前記溝と係合する周方向の膨出部を設けたブロツク玩具が記載されている。
第七引用例には、鉛筆の軸の一端に突設した前記軸よりも小形の角柱状の突出部を他の同形の鉛筆の他端に形成した角柱状の嵌入孔に密嵌させ得るようになつている鉛筆が記載されている。
第八引用例には、軸の端部に形成された角柱部にハンドルの一部の角孔を嵌合させるようになつているハンドルが記載されている。
第九引用例には、重い支持台に支持された円形断面のパイプから成る心棒と、この心棒に着脱自在に外挿される複数の筒形幹体及び分岐幹体と前記心棒の上端に外挿された筒形幹体の上端の開口部に嵌め込まれる栓体と、この栓体の支持孔に嵌入される樹冠を備えた頂幹とから成る組立式クリスマスツリーにおいて、前記分岐幹体として二形式のものが用いられ、一方の形式の分岐幹体にはその表皮面から斜め上方に放射状に突出する複数の枝取付片が一体に設けられ、この各枝取付片の先端部に形成された嵌合孔に枝体の基端の嵌挿部が着脱可能に嵌挿されるようになつており、他方の形式の分枝幹体にはその表皮面から斜め上方に突出する一つの枝取付片が一体に設けられ、この取付片の端部に先端に球状の膨出部を備えた細い連結プラグが設けられ、枝体の基端に形成された嵌合孔を前記連結プラグに嵌入させるようになつている組立式クリスマスツリーの幹体構造が記載されている(別紙図面四参照)。
第一〇引用例には、側辺に鋸歯状片を有する取付金具を取付部品に固定し、前記鋸歯状片を取付基板の取付孔に圧入し、取付部品を取付基板に固定する部品取付装置が記載されている。
甲第一一引用例には、一方の部品に凸部を設け、他方の部品に凹部を設け、凸部を凹部に嵌合させて二つの部品を結合するものにおいて、前記凸部の外周に先端が弾性のある突起を設けた部品結合手段が記載されている。
丙第一号証の第一三頁の価格表の価格と丙第二号証の価格表の価格との対比にのみよつては、丙第一号証のものが本件考案の出願前に頒布されたものと認めることができないので、丙第一号証は、本件考案の出願前の公知事実を立証する証拠として、採用できない。なお、丙第三号証は、第九引用例と同じものである。
5 本件考案と第二引用例記載のものとを対比する。
第二引用例記載のものの「中空角形心棒」は本件考案の「角パイプ状の第一心棒」に相当し、第二引用例記載のものの「幹頭体」は、棒状で中空角形心棒(第一心棒)の上端開口部に嵌め込まれる差込み部分を有しているから第二心棒ということができ、また、本件考案の「鉢体」は、鉢状の支持体ということもでき、第二引用例記載のものの最下部以外の「筒形幹体」は本件考案の「中間幹体」に相当するものと認められる。
したがつて、本件考案と第二引用例記載のものとは、鉢状の支持台に取り付けられる角パイプ状の第一心棒と、この第一心棒に着脱自在に外挿される複数の中間幹体及び分枝幹体と、前記第一心棒の上端開口部に嵌め込まれる差込み部分が一体に設けられた円柱状の第二心棒とから成る組立式クリスマスツリーにおいて、前記分枝幹体には表皮面から斜め上方に放射状に突出する複数の枝取付片が一体に設けられ、この各枝取付片の先端部に嵌合孔が形成され、この嵌合孔に着脱可能に嵌挿される枝体の嵌挿部が前記嵌合孔に対応する形状になつている組立式クリスマスツリーの幹体構造である点で共通しているが、次の(一)ないし(三)の点で両者は相違している。
(一) 本件考案においては、分枝幹体の各枝取付片の先端部に正多角柱状の嵌合孔が形成され、枝体の前記嵌合孔に着脱可能に嵌挿される嵌挿部が前記嵌合孔に対応する正多角柱状に形成され、かつ前記嵌挿部の表面に抜止め用の凹凸が形成されているのに対し、第二引用例記載のものにおいては、分枝幹体の各枝取付片の先端部に嵌合孔が形成され、枝体の前記嵌合孔に着脱可能に嵌挿される嵌挿部が前記嵌合孔に対応する形状に形成されている点。
(二) 本件考案においては、鉢体の支持孔に棒状の基幹体が取り付けられ、基幹体の外周下方部を漸次に拡大するように形成した鍔部が前記鉢体の支持孔の上端面に当接支持され、前記基幹体の軸方向に形成された角柱状の孔に角パイプ状の第一心棒が内挿されているのに対し、第二引用例記載のものにおいては、鉢状の支持台に中空角形心棒が直接立てられ、この中空角形心棒に外挿される筒状幹体の最下部のものが下方に向かつて漸次に拡大する形状になつていて、その下端面が鉢状の支持台の上面に当接されるようになつている点。
(三) 本件考案においては、角パイプ状の第一心棒の上端開口部に円柱状の第二心棒の差込み部が嵌め込まれ、複数の中間幹体と、第二心棒を挿通する挿通孔を備え、かつ、小枝、突出枝、針葉等を有する枝取付体とが第二心棒に着脱自在に外挿され、前記枝取付体が中間幹体に挟持されるようになつているのに対し、第二引用例記載のものにおいては、中空角形心棒の上端開口部に、幹頭体に一体に設けた小径の柱状差込み部分が着脱自在に嵌め込まれている点。
6 相違点について検討する。
(一)について
一方の部材に設けた多角形の嵌合孔に、他方の部材に設けた前記嵌合孔に対応する多角形の突出部を嵌入させて二つの部材を回動不能で位置決め容易に結合する結合手段(以下「結合手段(イ)」という。)は、第二引用例、第七引用例、第八引用例に記載されているように、本件考案の出願前周知のものであり、また、一方の部材に設けた嵌合孔に他方の部材に設けた突出部を嵌入させて二つの部材を結合する手段において、前記嵌合孔の内周面に突起や溝を設けたり、前記突出部に突起や膨出部を設けたりして抜け止め作用を付与する結合手段(以下「結合手段(ロ)」という。)も、第三引用例ないし第六引用例及び第九引用例ないし第一一引用例に記載されているように、本件考案の出願前に周知のものである(第三引用例記載のものは前記結合手段(ロ)を樹枝茎主幹と枝幹主体との結合に用いた例であり、第九引用例記載のものは、前記結合手段(ロ)を分岐幹体の枝取付片と枝体との結合に用いた例である。)。
ところが、分枝幹体の枝取付片と枝体との着脱自在な結合に、枝体の回動不能で位置決め容易な結合手段、すなわち、前記結合手段(イ)を用いたものは、請求人の引用した各引用例に記載されておらず、ましてや、分枝幹体の枝取付片との着脱自在な結合に、前記の結合手段(イ)と結合手段(ロ)を併用したものは、請求人の引用した各引用例に記載されていない。そして、本件考案は、分枝幹体の枝取付片と枝体との着脱自在な結合に前記結合手段(イ)と結合手段(ロ)を併用する仕方として、前記一の相違点における本件考案の構成を選択したことにより、枝体をその軸回りに回動させた任意の位置に自在に位置決めして枝振りなどを容易に変化させることができるとともに、結合状態が確実になつて不用意に外れたりすることがないという効果(以下「効果A」という。)をも奏するものである。組立式クリスマスツリーの組立は、一般には子女などによつて年一回行われる作業であるから、枝振りなどを容易に変化させることができ、不用意に外れることがないという前記Aの効果は格別のものというほかない。
(二)について
第二引用例記載のものにおいては、中空角形心棒が鉢状の支持台に直接立てられ、最下部の筒状幹体が前記中空角形心棒に外挿されていて、その下端が鉢状の支持台の上面に当接されているようになつているにすぎず、第九引用例記載のものの円形断面のパイプから成る心棒も支持台に直接支持されているようになつており、第一引用例には支持鉢の底部の凹部と蓋体の中央の孔とにクリスマスツリーの基幹部をどのように取り付けるのか記載されていない。また、第二引用例記載のものの柱状差込み部分と柱状部分と鍔部とを備えた幹頭体を、その柱状差込み部分を中空角形心棒の上端開口部に差し込んで、中空角形心棒に着脱自在に取り付ける手段は、大径の棒状体の端部を他の部材の小径の孔に差し込んで取り付ける際の取付けの手段にすぎない。したがって、棒状の基幹体を鉢状の支持孔に取り付けて、基幹体の外周下方部を漸次に拡大するように形成された鍔部を鉢体の支持孔の上端面に当接支持させ、基幹体の軸方向に形成された角柱状の孔に角パイプ状の第一心棒を内挿させて、基幹体に第一心棒を立てるようにする点は、請求人の引用した各引用例に記載されていない。そして、本件考案は、前記の点を有することにより、基幹体が鉢体に堅固に密着して取り付けられ、かつこの基幹体の角柱状の孔に角パイプ状の第一心棒が堅固に取り付けられ、鉢体に第一心棒を堅固に樹立できるという効果(以下「効果B」という。)を奏するものと認められる。
(三)について
第二引用例記載のものの幹頭体は、それに中間幹体及び枝取付体を外挿するものではなく、また、第二引用例記載のものは中空角形心棒を用いており、第九引用例記載のものは円形断面のパイプから成る心棒を用いているが、中間幹体や分枝幹体が外挿される第一心棒として角パイプ状のものを用い、第一心棒の上端開口部に差し込まれ、かつ中間幹体や枝取付体が外挿される第二心棒として円柱状のものを用いた組立式クリスマスツリーの幹体は、請求人の引用した各引用例に記載されていない。そして、本件考案は、前記の点、すなわち、前記(三)の相違における本件考案の構成を有することにより、分枝幹体の位置調整は第一心棒に外挿させた状態ではできないが、枝取付体の位置調整は第二心棒に外挿された状態でもできるという効果(以下「効果C」という。)を奏するものと認められる。
前記(一)ないし(三)についての検討結果を総合して判断するに、本件考案によつてもたらされる効果(すなわち前記AないしCの効果)は、第一引用例ないし第一一引用例記載のものから極めて容易に予測できた程度のものと認めることはできない。
なお、丙第三号証(すなわち第九引用例)記載のものも、前記(一)ないし(三)の相違点における第一心棒の構成を有していない。
したがつて、各引用例に記載されたものが一部の構成において、本件考案と一致するところがあつても、本件考案の構成に欠くことができない事項を備えていないものであるから、結局、本件考案が前記各引用例に記載されたものに基づいて極めて容易に考案することができたものとすることはできない。
7 以上のとおりであるから、請求人及び参加人の主張する理由及び証拠方法によつては、本件考案を無効にすることはできない。
〔編注3〕本件における図面は左のとおりである。
別紙図面一
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